なんだか最近ハサミアニメ多くないっすかー?

現在じぶんのなかで今期No.1どころか、数年に1本の出来のアニメなんじゃないかと話題の『ガッチャマン クラウズ

ガッチャマン クラウズ|日本テレビ

そんなガッチャマン クラウズは変身ヒーローものなので当然劇中で主人公たちが変身するんだけど、
主人公のはじめちゃんがガッチャマンに変身したときの武器がハサミだったんです。


なんでハサミ?

主人公の武器、しかも変身した姿や武器は心が具現化したものという設定が用意してある中で『はさみ』を出したことにはなにか意味があるはずdeath!
そこでなにか参考になるものはないかと周りを見回してみると、アレ?なんだかハサミを持っていることを個性にしたキャラクタが多いぞ Σ( ̄□ ̄;)

こんなにたくさんあるハサミリスペクト

タイトルの一部にもなっている今期放送のアニメ『犬とハサミは使いよう断裁分離のクライムエッジ』これは前期にやっていたアニメです
謎の彼女X 1(期間限定版)(Blu-ray Disc)

謎の彼女X 1(期間限定版)(Blu-ray Disc)

謎の彼女X』もなぜかパンツにハサミが挟まっていました。

いつのまにかハサミをもつのが女の子の間で流行のトレンドになってた\(^o^)/

存在としてのハサミ

なんでこんなに女の子はハサミを持ちたがるのか、謎は深まります・・・。
そもそもハサミは文房具のひとつだよね。だいたい日常的に目にするハサミの使い方は次の3つだとおもいます。

  • 文具としてのハサミ
  • 髪を切るためのハサミ
  • 植物を剪定するハサミ

ハサミを題材とした作品でまず取り上げるべきはやっぱりティム・バートンの『シザーハンズ』かな。

この作品は上の3つのハサミの使い方をだいたいやっていてすごい。
シザーハンズは手がハサミになっているせいで他人と触れ合うことが出来ない人造人間の悲しさを描く童話だけど
手がハサミになっているおかげで庭の木を綺麗に剪定できたり、髪の毛を切ったりすることで周りの人たちに受け入れられていく姿が描かれていた。
手と手を繋ぐことは出来ないけれど、作ったものが代理的にコミュニケーションの支えになっているのかなーなんて。

この辺は能力のせいで人と触れ合うことが出来ないうつつちゃんに折り紙をあげるはじめちゃんと絡めて語れるかなぁ。なんてことも思う。思うだけで考えてない。

日常の中の凶器、Anotherなら死んでた

KOKUYO ハサ-160D ハサミ<テピタ>黒

KOKUYO ハサ-160D ハサミ<テピタ>黒

ハサミは日常的に使う、どんな家庭でも1つや2つは家の中にハサミがあると思う。
でも、実はハサミって日常生活で身近にあるものの中では危険なもののひとつなんじゃないかなーと。
キッチンにある包丁などは直接的で危険がわかりやすい存在だけど(小さい頃に好奇心から包丁に触って怒られた思い出があります)
小学生時代から文房具として使うハサミは日常の一部になっている。普段気づかないけどフトしたときに怖いなーっておもう存在がハサミって気がします。

女の子はなんでハサミをもつの?

化物語(上) (講談社BOX)

化物語(上) (講談社BOX)

化物語にでてくるツンドラ(ツンツンドライ)とも称される戦場ヶ原ひたぎはホッチキスやエンピツ、ハサミなどの文房具を武器として大量に持っていて、
それで主人公のあららぎ君に脅迫を行ったりします。そんな彼女の攻撃性はじぶんの抱えている大きな問題から来てたりする。
謎の彼女Xでは卜部の不器用な照れ隠しやミステリアスさを出すのに一役買っていたりもします。
普通は文房具として使うハサミをあえて武器として使ってしまう女の子。
ハサミは不器用なコミュニケーションで思わぬ攻撃性を発揮してしまう少女性を象徴しているようにおもえます。

ハサミの機能=断ち切る

ファイブスター物語という漫画で出てくるキャラクタで「クローソー」っていうハサミをモチーフにもっている女の子がいるんですが
この子の漫画上での役割というか設定というかは『物語を終わらせること』です。主人公の神様を倒すためにストッパーとして作られた存在なんです。
ハサミの『切る』という機能から『終わらせる』という連想でそういった役割が込められるんでしょう。
そういえば最近シンフォギアGで切歌ちゃんがフィーネに覚醒したときも、切歌=歌を切る=歌を終わらせる=フィーネ だったんだという説がでてましたね。

はじめちゃんはどうしてハサミをもっているか

ガッチャマン クラウズのはじめちゃんはコラージュが趣味という設定でGALAXでコミュニティを主催してオフ会なんかもやっちゃってます
はじめちゃんの考えは「世界がこうなるといいな。ぐわーって色んな集まって、でもみんなニコニコ〜ってなればいいのにな」という台詞に集約されていて、それはコラージュだよなー。
そんなキャラクターだからハサミを持っているのはわかる。じゃあなぜそんなキャラクターにしたんだろう

コラージュするためにはまず『素材』『切り出す』行為が必要なんですよね。そのことから『素材を切り出す者』は 『素材』よりも上位の存在といえると思います。
そうやって見てみるとガッチャマンチームの上司のJJはいつもハサミで鳥の絵を切ってて、
その鳥は丈さんがやる気になったり死にそうになったりすると燃え上がったりする。ハサミって神様が持つものなんすよねー。
公式サイトにもはじめは『デザイナーのNOTE』をもっていて「万物を創造する」可能性を秘めた能力があるって書いてあるし!
つまりはじめちゃんは神、いわゆるゴッドなんすよ!!

シャアは地球の人類すべてに英知を授ける方法はないって絶望してアクシズを落としたけど神ならそれができるかも!!
変身すると姿が見えないベルク・カッツェには正直パイパイの『質量』とか丈さんの『炎』とかの物理現象では勝てない気がするんですよねー
だから神になって新しい概念つくって勝つしかない!!

ガッチャマンと『正義』のはなし

2話を見た時点で「なんでこんな面白いアニメが話題にならないんだー!うがーー!!!」なんて思ってたんですが、
最近はてな界隈で盛り上がってきて、自分と同じ思いを抱えていたひとがたくさんいたことになんだか嬉しくなったりしました。
そんなこんなでやっぱり自分も記事を書かなければ!と決意。 というか見ると語りたくなるのがガッチャマンクラウズの魅力でもあるのです!

しかし、ガッチャマンクラウズのどこが面白いのか…というのは、もうすでに書かれている記事の完成度が高すぎて書く必要を感じない…。


ガッチャマンクラウズ』 3つの対立軸
http://dokaisan.hatenablog.com/entry/2013/07/31/233709

ガッチャマンクラウズが予想以上に面白いアニメだった、という話 - www.Swatz.net
http://www.swatz.net/entry/2013/07/30/203705

ガッチャマン クラウズ』を薦めたくなる三つの理由。 - 脳髄にアイスピック
http://d.hatena.ne.jp/Lobotomy/20130731/p1

アップデートされるヒーローと世界「ガッチャマンクラウズ」 - 藤四郎のひつまぶし
http://d.hatena.ne.jp/alphabate/20130721/1374402608


面白い記事がたくさんある

そこでガッチャマンクラウズでは大衆とヒーローを対立軸になっているけど、そこに正義についての横糸が張っているんじゃないかなと思いついたことをつらつらと書こうかな。

GALAXの正義

ガッチャマンクラウズではGALAXというSNSサービスが登場する。
GALAXの特徴的な機能は、困ってることを丹下桜ボイスの総裁XというAIに相談すると、付近でその悩みに対応できそうなGALAXユーザがいないかを検索しマッチングしてくれるというサーボスだ。
助けを求められたGALAXユーザは基本的には善意でそれに答え「世界をアップデート」させる。


いたるところに登場するGALAXのキャッチコピー

そんなGALAXの開発者である爾乃美家 累は大衆という存在を総裁Xでマッチングさせることでヒーローがいなくても「世界をアップデート」できる世界を目指している。
しかし、善意によって動いているシステムが間違った情報を元にして動き出したとき、どうなってしまうのか。
大衆の力で世界をアップデートしようという思想なのにギャラクターから選ばれたハンドレッドにクラウズの力を与えるという矛盾をかかえている所もすこし不安だ。


ネット(大衆)の力をハンドレッドに貸し与えている?

累はGALAXをつかって人の心のもつ「善意」を武器にして世の中を良くしようとする。しかしその善意をコントロールする中枢である総裁Xは特別でヒーロー的属性をもつことが不安の影を投げかけている。

ガッチャマンという存在

作中でGALAXと対になっている存在がガッチャマンだ。
ガッチャマンは特別な力を持ったヒーローなので個人で大きな事件にも対応できる存在だ。
しかし、第3話でガッチャマンがそれまで「敵」として退治してきたMESSという宇宙人が実はそれほど脅威ではない、コミュニケーションが可能だという事実が判明する。

ここでガッチャマンチームがもっていた「正義」にすこし疑問符が浮かび上がる。

そんなガッチャマンに任務を与えている司令官的存在のJJは「評議会」のメンバーで宇宙人だ。ガッチャマンチームのリーダーであるパイマンやO・Dはどうやら他の星でもガッチャマンとして活動してきた宇宙人らしい。
第2話でパイマンがテレビで政治家の汚職ニュースをみながら「ったく地球人は、レベル低いわ」と語るところも上から目線でなんだか他人事のような感じをうける。


いまいち何を考えてるかわからないJJ

また4話では、地球は保護観察中の僻地の星だと語られる。宇宙には多数の文明があり、地球はその中でも文明が遅れているせいかなんなのかで宇宙同盟から保護されている設定らしい。
つまり地球人は上位の存在に保護される被保護の立場なのだ。
これは作品全体を通して地球人(マス)と宇宙人(エリート)という対立軸にもなっている。

今のところガッチャマンチームはJJの指令に従っているだけなので、地球の正義のためというより、もっとスケールの大きい宇宙文明が決めた正義に従っているようにも思える。

一方、地球人でありながらガッチャマンをやっている丈と清音は正義を行使することに積極的だが、行為の意味にについては深く考えてはいないっぽい。

実はガッチャマンチームではあまり正義観の共有はされてなくて、なんかよくわからん評議会の意向や個人の信条で動いている。

はじめという存在

そんなガッチャマンチームに新人として入ってきたのがはじめだ。
はじめは初戦から「MESSは敵として排除する」というガッチャマンチームの行動指針を無視してMESSとコミュニケーションがとれること発見。被害を根本から食い止めることに成功する。
ガッチャマンチームがいままでやってきたことをひっくり返してしまったのだ。

はじめは肩書きにはこだわらず、じぶんにない視点を想像することのできるキャラクターだ。
第4話でも丈は敵だといって相手にしていないベルク・カッツェの言葉についても頭を悩ませたりしている。悪事を働くカッツェの言葉にも真実が含まれている可能性を考えることができる。

この作品にはいろいろな人が(それこそ宇宙人まで)それぞれの考えをもって登場する。

そこで複数の視点を考慮して行動できるはじめというキャラクターが今後どんな影響を与えて、どういう方向にベクトル合成していくのか、注目したい。





あとはじめちゃんのおっぱいにも注目したいッス!

(はじめちゃんがおっぱい大きいのはナウシカのおっぱいが大きいのと同じ理由だと思うのだ)

『超次元ゲイム ネプテューヌ』1話戦闘シーンが超気持ちよかった

最近始まった『超次元ゲイム ネプテューヌ』を見ていて、戦闘シーンの気持ちよさに驚きました。
今期アニメは15本くらい観ているけど、一番「ハッ(゜ロ゜」とさせられたシーンだった。
というわけで。どうしてそう感じたのか ということを自分なりに考察してみましたー。

カットが切り替わるテンポとリズム感


戦闘シーンの入りは、まず遠景のカットから始まります。

そこから主人公が前転をしながらカメラに向かってくる。

そして次のカットでは主人公の顔のアップ。「これから見せ場がはじまるよ」って感じですかね。

そして刀を抜いたシーンですこし絵を止める、これが一連のカットのキメです。
この、導入→誘引→キメ の流れがキレイなのが気持ち良い感覚の原因なのかも。

次は戦闘シーンの合間の場面です




ネプテューヌと妹のネプギアの左右のカットが繰り返されるシーンで、リズム感があり様式的にもきれいで良いです。

こうして見ると、どちらのシーンもテンポよく、リズム感がある作りになっています。

アニメ(映像)は"動いている"という特性上、絵画や漫画と違い、視聴者の時間を拘束してしまいます。
つまりアニメを見ているとき、アニメが動いている時間と視聴者が観ている時間は同期しているんです。
だから映像をみている時間を視聴者に楽しんでもらうには、厭きさせないよう映像に緩急、リズムをつけることが大事で、それが映像のダイナミズムにもなります。
この戦闘シーンのリズムは非常に明快で、視聴者を引っ張っていってくれるものになっています。

カット同士が生み出す空間の連続性


ふたりで丘を駆け下りる

ネプテューヌが敵を倒したポーズのまま一瞬固まる。

すると右から妹のネプギアがフェードインしてきて、そのままネプギアのキメシーンへ

ネプギアがスライヌを倒すと

後ろにお姉ちゃんがいた!

それまでのカット割りもふたりの位置関係がわかりやすいものに作られているし
キメカットの次に横からフェードインさせることでカット同士がスムーズにつながって見え、視聴者が"そこにある"と感じることのできる空間性も獲得しています。
また最初モンスターによって隠れている場所からネプテューヌが現れることで、より空間性が強調されます。

総論

次々と場面が進み、巻き戻してみることが難しいアニメという媒体では、わかりやすく、かつ順序良く説明していかないと視聴者の理解が追いつかないということはまま起こるんじゃないかと思います
それがこのバトルシーンでは良くできていたんじゃないかなー。
バトルシーンというスピード感が大事な場面で、リズムとテンポがよく、しかも奥行きを感じさせる画面構成をつくる技術はすごいです。
調べると向井雅浩さんというかたがコンテと演出をやってるみたいで、これからはチェックしなければ・・・。
というわけで、そんな素晴らしいバトルシーンが楽しめるネプテューヌをみんな見ようよ!

あと最近だとドキプリ20話で変身バンクからカットが変わってもポーズがそのままだったのも"同じ時間にある"と感じるいい演出でしたね。
 

映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

ターンエーガンダム全話みた感想

 ちょっと前に、やっぱり富野さんの作品を一度ちゃんと見ておかないとイカンなと思って、TUTAYAでターンエーを借りてきて1週間くらいで全話みた。
感想としては観てよかったと思いました。最近見たアニメと比べるとキャラクターや物語を作っていく力(意志?)が全然ちがうし、全体に一つの哲学が走っているのが気持ちが良かった。

一番好きになったエピソードは第20話「アニス・パワー」と第32、33話「神話の王」「マニューピチ攻略」だ。

 第20話「アニス・パワー」では、戦場が近づいてきているのに先祖から受け継いだ畑から避難しない老婆アニスが、その畑を戦場にして焼き尽くすムーンレィスの機械人形に向かい「おまんまを誰から頂いてると思ってるんだ、この土っころがみんな作ってくれるんだ!」と叫ぶ。
実際、地球に帰化するためと言いつつ、無理やり土地を占領しているムーンレィス内では食糧不足の問題が起きていて、街で食料を略奪している描写もされている。戦争をする(遊ぶ)ことだけにかまけて、生きる(食べる)ことを想像しない男たちの視野の狭さ、愚かさを感じることが出来るエピソードで好き。

 第32、33話「神話の王」「マニューピチ攻略」は古代文明のような王政をとるマニューピチを舞台にした話で、金枝篇をベースにしたような非常に神話的な構成になっている。
まず、テクノロジーの結晶であるガンダムと、神話的なモノを違和感なく絡めて話が作れるのがすごいなーと思いましたね。
なぜそういうことが出来るかというと、モビルスーツが戦争をするための兵器として開発されたのではなく、黒歴史の遺物として土の中から発掘されたことで、土着の物、もともと土地にあったモノにしているからだと思います。そうすることでモビルスーツは地球人に「戦争もできる道具」みたいな認識で受け取られています。
例えば、ソシエはカプルをこの子って呼ぶし、ロランはガンダムで牛を運ぶ。そういう光景はひどく牧歌的で癒される。
 また土着的な古いものとすることでガンダムは宗教的な性格も得ている。ファーストでガンダムは「白い悪魔」と呼ばれていたけど、それはあくまで都市伝説的なニュアンスにすぎなかった。けれど、ターンエーが昔から村の成人儀式で神像として使われていたように、よりアニミズム的存在としても扱われている。

 ロボットアニメでは、なぜロボットを出すのかって理由付けが必要だと思うんだけど、ターンエーでは、戦争ができる道具を手に入れた時、人はそれを賢く使うことができるのかっていう普遍的なテーマを描くためにちゃんと使われていて、この設定を思いついたのはすごい。
 
 そういう意味で、宇宙世紀ではニュータイプという能力は、人の革新と言われながら単なる戦争の道具になっていったという歴史だったのに対して
ターンエーでは、ニュートラルな力として発掘されたガンダムをなんとか建設的に使おうとする思いがみんなの中にあったところが、富野監督が人類はそこまで愚かではないと思っているように感じてよかった。

にっこにこの新しい未来

 時計のアラームが鳴りだす寸前、矢澤にこは半ば無意識に手を動かしてスイッチをオフにした。
目をこすりながら手元の時計を見ると時刻はまだ朝の六時前だった。窓からは朝日が差し始めていて、外からはまだ行きかう車の音も聞こえず小鳥の群れが騒がしく鳴く声だけが聞こえる。
客観的に見て、春日和の気持ちの良い朝だった。

 にこはモゾモゾと動いて温かい布団の誘惑から抜け出すと、猫のようにひと伸びする。
寝ぼけ眼で洗面所に行って顔を洗って目を覚ますと、台所に行ってエプロンをつけたにこは家族全員分の朝食と、昼のお弁当の下ごしらえを手慣れた様子で始めた。
居間にあるテレビはボソボソと今日の天気やニュースを呟いていて、にこが包丁をつかうトントンという小気味いいリズムが重なるように居間に響いていた。
 朝ごはんと学校に持っていくお弁当を作り終えて、にこが居間をのぞきこむと、ちょうどテレビでは七時前の星座占いが終わった所だった。
調子に乗っていつもよりおかずの品数を増やしたせいか、のんびりと朝食を取っていると電車の時刻に間に合うかギリギリの時間になっていた。
にこは大急ぎで家族を起こしてから、朝食をかきこむように食べると慌てて玄関を飛びだした。
「いってきまーす」
鉄製の扉がガチャンと大きな音を立てて閉まる。鍵をかけたことを確認してから、にこは団地の薄暗い階段を2,3段飛ばしで駆け降りて通学路を走った。

 午前中の授業は、新学期が始まったばかりということもあって簡単な内容で、時間は穏やかに過ぎていった。
昼休みを告げる鐘が鳴る。授業を終えた教師が教室から出ていくと、教室は一気に昼休み特有の弛緩した雰囲気に包まれた。
教室の生徒たちは親しい友人と話したりしながら、ざわざわと仲の良いもの同士で机を固めて昼食の準備を始める。
ようやく季節が春になっていることに平均気温も気がついたのかポカポカと暖かかったので、屋上や校庭で昼食をとろうと教室を出ていく生徒の姿もちらほらとみえた。
にこは誰とも会話せず、ひとり鞄から弁当を取りだし昼食を取ろうとしたとき、唐突に後ろから声をかけられた。
「にこっち、一緒にお昼ごはん食べに行かへん」
うさんくさい関西弁から声をかけてきたのは東條希だとわかった。
「ふん、お断りよ。私、ご飯は一人で食べるのが好きなの」振り返って応じる。
「またまたー。にこっちは素直じゃないんやから。あんまり意地をはるとワシワシマックスしちゃうでー」
希が両手をあげて近づいてくる。
これ以上意地を張ると、教室でのクールなイメージが崩れてしまうかもしれないと思って、にこは仕方なく同意することにした。
「わかったわよ、仕方ないわねー」
少し嬉しい顔になりそうなのをなんとか我慢して、それを隠すように希から顔をそむけた。
 
 希の提案で、天気がいいので昼食は教室を出て屋上で取ることになった。希が屋上に通じる階段を上がっていくのをにこは後ろからついていく。
いつみても希のけしからないスタイルは気に入らない。高校三年生になっても、ちっとも成長しない自分の体と比較してにこはそれと知れないようにがっくりと肩を落とした。
屋上につくと何組か昼食を取っているグループはいたが、運良くまだベンチには空きがあって座ることが出来た。
二人並んでベンチに腰をかけてお弁当を広げる。
「お、にこっちのお弁当美味しそうやね。また料理うまくなったんとちがう」希が弁当箱をのぞきこんでくる。
「あげないわよ、希の弁当はあいかわらず統一性がないわね」すこし呆れた顔で言う。
「毎日風水と八卦を見て内容を決め取るんよ。それはそうと、にこっち、アイドル研究部で一年生の勧誘はしないん」
にこは少しどきりとして、それを悟られないよう素早く会話を返す。
「にこのレベルに付いてこられるアイドル好きなんていないのよ」澄ました風に言う。
「そうはいっても、一人で部活なんてさみしいやろ」
「そんなことないわよー、やることだっていっぱいあるし。アイドルの実地取材でしょー、その感想を書いたりもしないといけないし―――」
「たまには素直になったほうが良いよ、にこっち」
「私はいつだって―――」
「でも大丈夫や」会話を遮って希が言う。
希はどこからかタロットカードを取りだして、その一番上からカードを引くと目の前に差し出した。見ると男女が向き合っている絵に見える。
「またスピリチュアルがどーとかこーとか言うつもりなの」
「ちがうよ、占いはきっかけを与えてくれるだけのもの。どうするかはその人次第で、私はそれを助けるだけだよ」
「もう少ししたらきっと、にこっちにも新しい居場所ができると思うよ」希は笑顔で言った。

 午後の授業が終わり、放課後のチャイムが鳴った。にこは誰とも話さず教室を出ると、これからどこに遊びに行くか楽しげに相談をしている生徒たちや、部活に向かう生徒の間を縫って部室まで歩いた。
部室のドアを開ける。窓にはいつもカーテンが引いてあったので、部屋は暗く沈んでいた。
にこが入口横にあるスイッチを押すと電灯がつき、人工的な光が部屋を照らし出す。部室の両サイドある棚はアイドルグッズや本などが詰め込まれ溢れだしそうになっている、部屋の中心には長い会議テーブルが置かれていて、壁には各地のスクールアイドルのポスターが所狭しと張られている。それなのに部室の中はどこかガランとした印象があった。
 にこはカバンを机の上に放り出すと、いつも決まって座っている席について、部室に備え付けのデスクトップを起動させた。
ブラウザを立ち上げて毎日チェックしているアイドル情報系のサイトを巡回する。しかし、いつもは時間を忘れてしまうほど楽しいその時間も今日はどこか虚しく感じられた。
「はぁ…」知らずにため息が漏れる。
窓の外からは部活をする生徒たちの掛け声が遠く聞こえる。希に言われた通り、アイドル研究部として活動を続けるなら新しく1年生を勧誘する必要があることはわかっている。
でもにこは勧誘活動する気分にどうしてもなれなかった。
「…今日はもうやめにして帰ろうかな」
 
 にこが部室を出ると、すでに太陽は沈みかけていて、廊下はあかがね色に染まっていてた。
窓の外の空だけがまだ冬の名残を残して高く、夕日色と青色のグラデーションになっている。
廊下に、にこが歩くコツコツという音だけが響く。にこが1階に下りると掲示板の前でなにやら騒いでる三人組の女の子が見えた。
「ここに貼っておけば、きっとかっこいい名前、応募してくれるよね」元気そうな女の子が言う。
どうやら、なにかのポスターを貼っているらしかった。
「ほのかちゃん、いいアイディアだと思う」別の女の子は満面の笑みでそう言った。
「まったく、ほのかは人任せすぎます」あきれたような調子でもう一人の女の子が言う。
そんな会話をしながら掲示板にポスターを張り終えると、三人は二年生の教室のほうに歩いて行った。
にこは傍から見ていてもわかる3人の仲の良さが少し気になり、掲示板の前まで歩いて、さっき3人がいたあたりを覗いてみた。

《音ノ木坂スクールアイドル結成!グループ名を募集中です!!》

見た瞬間心臓をキュッと掴まれた感じがして、口の中に苦い思いが広がった。
自分が失敗して失敗して失敗したスクールアイドルを始めようとしている生徒がいる。
今でもメンバーがひとり、またひとりと去っていく光景は覚えていた。それは学校のどこにいても不意に襲ってきて、思い出すたび、にこはこみ上げてくる辛さに耐えなければいけなかった。
しかし、自分でも驚くことに、それを上回るくらいポスターを見た瞬間にこみ上げてきた想いは、嬉しさだった。もしかしたら微笑んでいたかもしれない。
この学校に自分以外にアイドルが好きで、スクールアイドルをやろうしている女の子がいることが嬉しかった。
あの3人が互いを信頼しあって絆でつながっていることは一瞬見ただけで伝わってきて、そのことも心に引っ掛かっていた。
これからやることができた。という想いがにこの胸の中におちてきた。
アイドル研究部としてあの三人が作るというスクールアイドルグループを監視しなければいけない。にこは急に目の前が開けたような錯覚を覚えた。
「よーし、さっそくあの3人の素性を調べるわよー!」にこはひとり空に腕を突き出して叫んだ。

その後、ストーキングを繰り返すうちに、にこは穂乃果達が作ったμ'sに引き込まれて新しい居場所を見つけることになるけれど、それはまたべつのお話。

放浪息子16巻の感想

放浪息子 14 (ビームコミックス)

放浪息子 14 (ビームコミックス)

ぐうううぅぅぅうう………。安那ちゃん可愛すぎっ!
というか、みんな可愛いんだけどさー!でもやっぱり16巻はあんなちゃんの可愛さが爆発してるよ。
めんどくさいなって思ってみたいとか考えたり、ちょっとワガママをいっちゃう所とかものすごい破壊力です。そりゃニトリンも夜中にトイレ行くわ!笑
あと今回思ったのはお姉ちゃんとシュウの関係ってなんかいいなーってことです。最初の頃、真穂とシュウの関係はアンバランスでハラハラしながら読んでたけど、最近は落ち着いてきて、普段は憎まれ口を叩いてるけど、深い所では信頼しているような姉弟関係がみえてとっても好きです。ギャーギャーうるさくなっちゃうって真穂がグチってるところが可愛かったw
しかし、芸能人と付き合ってすれ違いでヤキモキっていうのは少女マンガの鉄板だよねー(笑)これから二鳥くんとあんなちゃんがどうなっていくのか目が離せないよ…(>д<)

『ラブライブ!』6話で感じた大きな違和感

ラブライブ6話の中で大きな違和感を覚えたシーンがあった
それは終盤ほのかが階段を駆けのぼるところから、新しい曲のPVが始まるシーン。
自分はここの唐突感にとても違和感を感じました。
だってそのPVって学校をめちゃくちゃ飾り付けしてそこで歌って踊ってる半端ないクオリティのものなんだもん。PV撮影の準備の過程とかどこにいったんだ…って感じです。

  

ラブライブは物語を劇的に見せるためによくハッタリを利かせます。
そのハッタリの使い方のうまさを指摘する水音さんの記事マンガ☆ライフ |成功する流れを形成しているからこその挫折が熱い『ラブライブ』三話はとても面白い。
ただこのシーンの繋ぎの違和感はハッタリを利かせそこなったのとは別なものを感じました。


そこで、どうして準備の描写もなく唐突に新曲のPVがはじまったのか考えてみると…
「今回の話はエリーチカ先輩がみていたμ'sのPVだった」という仮説を思いつきました。

そう考えるとあの唐突さにも納得がいく気がするんだよなー
今回のはなしが編集されたPVだとすると、舞台や衣裳、撮影の準備をする場面がないことにも説明がつきます。
またμ'sメンバーが穂乃果をリーダーだと再認識した後のシーンから、急に新曲がはじまるのもPVなら構成として自然なものになります。

劇中劇をおもわせる描写

6話全体がμ'sの部活紹介PVという劇中劇なのでは…と匂わせるシーンは話のなかで3回あります。

1

前の記事でも書いた真姫の「撮らないで!」のアップからそれがカメラのモニターに映し出されてるカットに飛ぶテクニカルな時間圧縮演出*1
  
実はここで現在進行形の時間軸にもどってきたように見せかけて視聴者のミスリードを誘ってるんじゃないかという気がします。
それを示すように、このカット以降は前半で多用されていた画面に録画マークや電池残量が表示されるようなはっきりとカメラで撮っているとわかる画はでてこなくなり、撮影者である希の存在感も薄くなっていきます。

2

しかし、実はこの後にもカメラの存在が感じられるシーンがあります。それはμ'sメンバーがリーダーを決めるためにゲームセンターに行くシーン。

画面右奥でダンスゲームのやり方で悩む花陽たちがいます

そこに右上からニコ先輩がはいってきて手前にピントが合う

そしてまたニコ先輩が画面から出て行き、今度は奥で喜ぶ凛たちにピントが合います。
これがすごいPVを撮影してるっぽい。ただ実は同じカットの中で時間がぶっ飛んでるんだよね、こういうのを違和感なく入れてくるのがラブライブ演出のすごいところだと思います。

3

新曲PVが終わった後に会長がPCでそれを見てるカットに飛ぶ場面。
  
真姫のシーンと同じ入れ子構造になっています。ここは実は真姫のシーンではまだ入れ子の中で、6話は二重の入れ子構造になっていたという事をネタバレするシーンだったと思います。
ここで本当に作中の現在進行形の時間軸に戻ってきたんじゃないかな。


あ、あと書いてるときに見返して思いついたんですけど、μ'sが屋上で練習していて副会長がその様子をカメラで撮影しながらナレーションを入れるシーン。最初見たとき、なんで撮影しながらナレーションしてるんだろうと思ったけど、本編がPVだとするとあそこでナレーションを入れるのは正しくなりますね。


まとめ

僕が今回のはなしは実はエリーチカ先輩がPVを見てる話だとすると面白いと思った大きな理由は、そう考えると来週からの話にすごく「説得力」を持たせられると思うからです。
きっと来週の話ってエリーチカがアイドル研究部を助ける話ですよね。そうなったとき今回μ'sの普段の姿や練習風景を見ているとすれば、エリーチカ会長がμ'sを助けて、加入するという行動にすごく納得できます。

そう考えると6話は現μ'sメンバーの再結束を描きながら、エリーチカ先輩の加入動機の下地作りもするというウルトラCなことをやってる脚本ということになりますね。花田先生パナいっす!

  

アニメ『ラブライブ!』はマクロスシリーズのようなラブライブ世界でやっている「事実を元にしたドキュメンタリー風ドラマ」だという劇中劇説がささやかれていますが、6話に限ってはかぎりなくそういう見方が出来るとおもいます。
僕が書いたことに、どこまで正当性があるかはわかりませんが『ラブライブ!』というアニメはほんとうに色々な語り口がある作品で素晴らしいですね。

*1:この記事が素晴らしい2013-01-21