『地球外少年少女』ネタバレ感想 那沙・ヒューストンというキャラクタについて
配信日にNetflixで全6話を鑑賞。
8年ぶりにブログ更新するくらいにはハマってます。
まず、タイトルが良い『地球外少年少女』
『十五少年漂流記』みたいな普遍的で端的でプレーンな感じがカッコいい。
内容もジュブナイル物が好きなのでどストライクでした。
(最近、辻村深月さんの『かがみの孤城』を読了。これも良かった )
しかし、何度も見直すうちに魅了されたのは
「那沙・ヒューストン」というキャラクタでした。
以下、ネタバレ全開で考察しています。
■伏線だらけの物語と特異点の女
繰り返し見返していると、『地球外少年少女』にはメインストーリーの外側に繋がるような謎が散りばめられており、回収されていない伏線も多いことに気づきます。
以下に列挙すると
- 彗星の接近&核ミサイルの発射について、UN2からあんしんへアナウンスがない
- UN2とジョン・ドーの関係(大洋の父親もジョン・ドー?)
- 登矢と心葉以外の3人ムーンチャイルド(15人のうち10人は3歳までに死亡。登矢が最後に生まれた子供)
- 登矢の両親と、心葉の父親の事故死の真相(第7実験棟のカット、セブン誕生の場所?)
- 究極の知を求めるセブンが自死へ向かった理由
- 美衣奈の記録から那沙が銃を振り回す映像だけ消失した理由
- リンナハルに集められたメンバーについて、博士のひとり足りない発言(メールの暗号解析では七芒星が出来ているので7人集まるのでは?)
しかし、これらの不明点より大きな謎が「那沙・ヒューストン」というキャラクタです。
■虚偽80%の女「那沙・ヒューストン」
よくよく聞いてみると、劇中の那沙の発言は8割方が嘘です。(残りの2割は真偽不明)
以下に嘘を列挙すると
このような状態のため、何を目的として行動しているのか
本心はどう思ってるかなどが、非常に分かりにくいキャラクタになっています。
■行動からの読み解いてみる
那沙の発言は真偽がわからないので、行動から人物像を分析してみます。
・子供を大事にしている
Aシリンダを落下する登矢と大洋を追いかけたり、エレベータで衝撃波から美衣奈と博士を庇ったり、登矢と心葉への身体・精神的なサポートを行っていることから、事あるごとに口にする「子供が苦手」という言葉とは裏腹に、子供に対して親身な人物だとわかります。
・セブンポエム絶対主義者
上記のように子供たちが危ない場合では助ける那沙ですが、それを行わなかったシーンが有ります。美衣奈が隔壁に閉じ込められる場面です。ここでは那沙はセブンポエムの解析アプリを注視していて、美衣奈が閉じ込められることを知っています。しかし、助けるとタイムラインが乱れ、セブンの予知した未来が変わってしまうとして助けません。
このことから、子供は大事に思っているが、セブンポエムの実現ほどではないという優先順位が見えます。
その後、セブンポエムに従ってエアロックを開放するなど、自分の死さえ厭わないほどセブンポエムを絶対視していることが分かります。
■那沙の本当の目的
物語の終盤に那沙はジョン・ドーの一員であることを明かし、彗星セカンドセブンを地球に衝突させるために登矢達と敵対します。
しかし、これすら彼女の嘘のひとつです。
結論から言うと、那沙の本当の目的はセブンポエムの成就=心葉の生存=フィッツ=人類の絶滅回避 です。
それを読み解く鍵は、彼女が最後に心葉に送ったメールにあります。
■セブンポエムの終着点
心葉に送ったメールは内容は以下の通りです。
これは、おわりの物語じゃない。 始まりの物語よ。きっと見つけて
セブンポエムでは、心葉ちゃん、あなたは登矢くんとはお別れする未来が決まっています。
でもね、1つだけセブンポエムには謎の言葉があったの、それが フィッツ
フィッツが何を意味するかわからないけどそれは私が思うに、多分セブンにも読みきれなかった、誰にもわからない未来
セブンが読みきれなかった最後の可能性。それがあなたたちの選択
見つけて、心葉。 あなたの選択を
メールで那沙は心葉をセブンポエムを超えた選択をするように、明確に励ましています。
(ポエム通りだと登矢くんとお別れすることになると脅しながらw)
那沙はセブンポエムを実現させるために自分の死さえ厭わない原理主義者です。
それがポエムを超えることを応援するのはどういうわけか。
それはセブンポエムの終着点が心葉の選択のシーンだから ではないでしょうか。
■たったひとり 孤独に闘った彼女
エピローグでは心葉の選択の結果、フィッツが設立され、50年後には人類の30%が宇宙に上がり、人類絶滅が回避された未来へ向かっていることが示されます。
これはセブンが人類絶滅を回避するために見つけ出したルートだったのではないでしょうか(最後のトリガーは登矢と心葉の選択ですが…)
だから おわりの物語じゃない。 始まりの物語よ と言っているのでしょう
そして、そのことを那沙は知っていて、心葉が生きていられる、人類が絶滅しない未来に繋がるセブンポエムを実現するために、那沙はテロリストを演じた。命をも投げ出して、たった独りで孤独に闘っていた。 と考えると劇中の発言や行動の辻褄が合います。
■2通目のメール
那沙はエアロックを開いて宇宙に飛び出す寸前、心葉宛のメールを送信していますが
実はもう1通送信しています。一部しか確認できませんが
「先輩、セブンポエムは…
と書いてあります。想像できるのはジョン・ドーのメンバー宛だろうかという所までです。彼女の真意を登矢達が知る日は来るのでしょうか。
那沙・ヒューストン 役の伊瀬 茉莉也さんはコメントで
「(前略)マイク前ではだだっ広い宇宙を浮遊しながら形のない正解を探してるような感覚…。一言で言うなら【孤独】でした。…もしや、これが監督たちの狙いだったのか?!その答え合わせを早くしたいです。」と書かれています。
僕は孤独だった彼女の物語をもっと読んでみたいです!ぜひスピンオフを!!
■「那沙・ヒューストン」ムーンチャイルド説について
監督のインタビューでの発言と、キャラクター造形的に可能性は高そうですが
劇中で決定的な描写はないように思います。
2031年 月面で出産禁止 (登矢、心葉誕生)
2034年 ルナティックセブン事件(セブン死亡)
上記の時系列と、月生まれの子供は3歳までにインプラントしないと死んでしまうことを考えると、年齢的にはギリギリな気が…。エピローグのニュースでは21歳と報道されてますが、大幅にサバを読めばなんとかなるかなw