『のんのんびより』1話のもつ寓話性について考えてみた
本編も良いということが言いたい
前の記事では『のんのんびより』のアバンについての感想だけで終わってしまって本編について触れることができなかったので
今度は本編についても感想を書きたい。どうせ暇だし、友達もいないし雨降ってるしですることがブログを書くぐらいしかないんです。
いや、暇だからじゃなくて本編も物語中毒者的にすごく美味しかったから書くんだけどね? まず1話のあらすじを紹介すると・・・
1話のあらすじ
第01話 転校生が来た
一条蛍は、両親の仕事の都合で、東京から「旭丘分校」に転校することに。しかしそこは、自分を含め、全校生徒が5人しかいない学校だった!東京から転校してきた一条蛍、ムードメーカーの越谷夏海、女子最高学年の越谷小鞠、独特の感性を持つ最年少の宮内れんげ、まったりした田舎の大自然の中で過ごす彼女達の日常がはじまる!
1話は一条蛍が田舎に迎え入れられる話
なんで1話本編の話がしたかったのかというと、『のんのんびより』1話は非常に寓話的な構造をもってるから心に響くのではないかと思ったからです。
前回語ったアバンが終わってリコーダーを吹いていた宮内れんげや越谷夏海、越谷小鞠が学校に到着すると、転校生として一条蛍が紹介されます。
『のんのんびより』1話の主役は誰かというと東京から田舎にある「旭丘分校」に転校してきた一条蛍でしょう。
アバンではダンボールが軒先においてあったり、田舎らしくない洋風な家からでていく姿が描かれていましたがここで初顔見せです。
転校生として田舎の学校に迎えられた一条蛍は鉄琴の手動チャイムにビックリしたり、全校生徒が5人しかいない事、1つの教室に色々な学年の生徒がいることなど、都会と田舎のギャップに驚きます。
休み時間は廊下に置いてあるバケツについて越谷夏海に説明される。ここでもちょっと会話がずれていて面白い。
その後グラウンドで中当て(ドッチボールみたいなもの)をするんだけどここでも都会と田舎のギャップネタ。(田舎ではカギを閉めないんですよね)
家に親がいないためカギを持っていた一条蛍は「変わってらっしゃる」といわれてしまう。
「都会」と「田舎」の違いが執拗に描かれて、それに戸惑っている一条蛍が描写されます。
こんなふうに1話の前半は一条蛍がじぶんの今までの常識が通じない「田舎」という場所に放り込まれたことがシュールギャグを挿みつつ描かれます。
そして学校が終わった後の帰り道に蛍は高台から「田舎」を俯瞰して不安げな表情を浮かべる。
そんな蛍の表情をみて、宮内れんげは家に遊びにこないかと誘います。
1話を通してれんげは蛍のメンター(指導者、助言者)的な役割をはたすキャラクタなんですよね。
何故かというとプロローグのギャグで示したように、いま彼女は自分のいる場所が「田舎」なのかという「自分の居場所に対しての疑問」をもっているからです。
だから「田舎という場所になじめない」蛍の気持ちをキャッチできます。
そんなメンターのれんげの家に向かう道中、れんげは蛍に対してみかんの木があること、畑のこと、近くにあるお店のことなどについてレクチャーします。
でも蛍はれんげの家についてもまだ落ち着かない様子。
蛍にとって「田舎」は異界
そんなこんなで蛍は田舎になじめないまま、翌日になって小学校での給食のじかん。メニューは地元で取れた山菜をつかったものです。
これを食べた蛍は「美味しい・・・!」とはじめて笑顔らしい笑顔をみせます。
ここが大事な場面で「異界のものを食べる」というのはじつは古くから物語的にすごく重い意味があるんデス。
日本最古の歴史書である古事記ではイザナギノミコト(伊耶那岐命)が黄泉の国の食べ物を食べてしまったため生き返れなくなってしまいますし
ギリシア神話でも冥王ハデスから与えられた冥府のザクロを食べてしまったベルセフォネーは一年のうち四ヶ月を冥府で過ごさなければならなくなることが書かれています。(これが季節の始まり)
最近のものだとジブリの『千と千尋の神隠し』でも「異界」のものを食べて帰れなくなってしまうというお話でしたね。
- 作者: 冬木るりか
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2007/10
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 4回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
いろんな漫画作品の「食事シーン」を見比べてみる - 紫の物語的解釈 この記事をよむと物語における「食べる」ことの深さがよくわかります。
なので「田舎のものである山菜」を「美味しい!」と食べた蛍は田舎に受け入れられたってことになります。
「受け入れられた」し「受け入れること」も少し出来るようになります。でも実はまだ続きがあったのです!
通過儀礼
そんな蛍の姿をみて、れんげは「デザートの桜餅は取っておくのん」って言います。
カットが変わって、おそらく学校の裏山であろう場所を3人に先導されて、蛍が桜餅を持ちながら登っている場面が映ります。
しかし、この蛍がもってる桜餅がめちゃくちゃ落としそうなんですよね。わざわざ不安定な手元のカットも入れてきてる。
みていて不安で仕方ないです。
そして気がつきます。これって試練じゃん!!
これはアレですよ、ジョジョにあったやつですよ!
ワインをこぼしてはいけなかったり…
ポルポのライターをけしちゃいけなかったりするアレなんですよ!
ようするに通過儀礼というやつです
つまり蛍がこの桜餅をもし落としたりなんかした場合、死――にはしないでしょうがたぶん田舎でイジメられます。靴を隠されたりしちゃいます。
実際、蛍は一度木の根かなにかに足がひっかかって転びそうになるんですよね。危ない!汗
それでも蛍は頑張って、なんとか桜餅を落とさず山の頂上につきます。
そこは綺麗な桜の木がある「ハレ」な場所で3人も待っています。
この場所は試練を乗り越えた蛍へのご褒美かな
そして山の上から「田舎」を見渡して蛍はおおきく深呼吸をします。
そして全開の笑顔。はい!これで一条蛍は田舎に迎え入れられました!!
というわけで1話は蛍ちゃんがどうやって田舎に受け入れられるかを描いた物語でした。
ほんと蛍ちゃんがイジメられる展開にならなくて良かったです。そういうのは『凪のあすから』だけで十分だと思うよ!
とまぁ、自分にとって『のんのんびより』1話は非常に寓話的な構造をもっているように思えてとても面白かったです。
追記:桜餅からの連想ゲームで桜の木という風にもなっていたんですね、さっき気づいた!